水泳の〝自由型〟とは?(面白い人類史)

工藤シンクの世界, 文化

オリンピックの水泳には〝平泳ぎ〟〝背泳ぎ〟〝バタフライ〟〝自由型〟の4種目があります。
〝自由型〟といえばクロールですが、それがなぜ〝自由型〟なのか?

、、、そこにはとても面白い経緯が隠されているんです。

 

水泳の〝自由形〟とは?

そもそも、水泳の〝自由型〟とは何なんでしょう?

自由型 : 競泳の種目の一つで、どのような泳法を選んでもよいので、ともかく速く泳ぐことを競うものである。 (Wikipedia)

つまりどんな型でもいいから泳ぎの速さを競うのが〝自由型〟ということですね。
〝自由型〟といえばクロールなのは、クロールが一番速いからというだけのことだからです。

 

そもそも『泳ぎ』とは〝平泳ぎ〟のことだった

1896年の記念すべき第1回オリンピック、アテネ大会の水泳競技は全員が平泳ぎでした。
なぜなら当時の水泳は息継ぎという概念がまだなく、『泳ぐ』ということはイコール〝平泳ぎ〟のことだったのです。

競泳は『泳ぐのを競う』ことであり、明言するまでもなく〝自由型〟でしかなかったわけですが、、、『泳ぐ』とは〝平泳ぎ〟でしかなかったわけです。

 

続々と登場する新泳法

そこに新しい泳法が登場します。

息継ぎをしないでよいうえ、平泳ぎより速い新しい泳法、、、それが〝背泳ぎ〟です。

水泳を愛する人々や委員会にとって、この存在は困りものでした。
なにせ『速い』ので、勝つためには誰もが背泳ぎをするようになるからです。

新しく誕生した背泳ぎは、当時はまだ奇抜で受け入れ難い泳法でした。
そこで委員会はバタバタと手足をかきしぶきをあげる背泳ぎは『紳士的ではない』とし、〝背泳ぎ〟を単一種目として切り分け分け、本来の〝水泳(平泳ぎ)〟を守ることにしました。

 

、、、しかしまた、より速い新たな泳法が登場します。

それが〝クロール〟です。

クロールは平泳ぎより早いので、選手たちは当然クロールを選ぶようになります。
そうなるとまた伝統と格式ある〝平泳ぎ〟の存続が危ぶまれます。
委員会はまた〝平泳ぎ〟と〝クロール〟を切り離そうとしますが、、、いつまた次なる新泳法が登場するかもわかりませんので、その余白のほうを〝自由型〟とし、今度は〝平泳ぎ〟のほうを独立した競技として守ることにしたのです。

そうしてひとつの種目として守られた〝平泳ぎ〟ですが、、、今度は平泳ぎのなかに新たな泳法が登場してしまいまいます、、、

それが〝バタフライ〟です。

〝平泳ぎ〟の定義が
・ うつ伏せで泳ぐこと
・ 手足の動きが左右対称であること
であったため、それに準じたうえでより速い〝バタフライ〟が平泳ぎの主流になってしまったのです。

伝統と格式ある〝平泳ぎ〟を守るため、、、委員会は今度は〝バタフライ〟を独立した種目とし、切り離しました。

そういうわけで、現代の水泳には〝平泳ぎ〟〝背泳ぎ〟〝バタフライ〟〝自由型〟の4種目ができたというわけです。
そしてクロールが最速の泳法として〝自由型〟のメインストリームとして100年以上君臨し、、、『自由型といったらクロール』という常識が現代に続いているだけのことなのです。

そう、、、〝自由型〟はいまだ新たな泳法の登場を待つ、余白ある種目なのです!

(しかし新たな革新的泳法が登場したら、水泳を愛する人たちや委員会は伝統と格式あるクロールを守るために、〝クロール〟を単独競技にすることでしょうね。)

 

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